世界のカギの始まりと日本のカギの歴史
私たちの生活で安全のために欠かせないカギ。今回はカギの歴史について紹介します。安全に関する欲求は大昔から高かったようで、歴史におけるカギと錠の発明はかなり古く、紀元前ニ千年頃には現在のカギとほぼ同じ構造のものが発明されていました。エジプト錠と呼ばれる最古のカギおよび錠は、かんぬきと錠の本体とを数本のピンで固定して扉が開かないようにしておき、外から錠を外して扉を開けるときは、扉外側の穴から鍵を差し込み、かんぬきと錠の本体を固定しているピンを押し上げて開錠する仕組みになっており、現代で広く使われているカギのシリンダー錠とほとんど同じ構造をしています。最古のカギであるエジプト錠は歴史が下るとともに改良が重ねられ、ギリシャ時代後期にはエジプト錠をより精巧にしたパラノス錠と呼ばれるカギが発明されました。ギリシャ時代初期までは扉を閉めておくために、かんぬきを革紐やロープで縛って複雑な結び目を作っておくしか方法がありませんでした。その結び目は複雑でその家の主人しか解けないために防犯の役目は果たしていましたが、安全度は低く結ぶ手間も必要なため不便なものでした。その後紀元前750年ごろのローマ時代にはまだエジプト錠やパラノス錠と同じ原理のカギが使用されていましたが、時代が下ると南京錠が使われ始めました。南京錠は地中海沿岸地方から中近東にかけて使用されており、特に中国では広く使用されていました。南京錠は中国(唐)から、奈良時代の日本に海老錠として伝わりました。この伝播した海老錠は、本体にかんぬきを差し込むとばねが働いて閂が固定され施錠される仕組みになっているカギです。この海老錠は仕組み的には簡単なカギですが、のちに日本文化に溶け込み神社錠や和錠に進化してゆきます。日本のカギのルーツはこのカギにあるのです。その後日本でもカギの開発が盛んになり、海老錠・太鼓錠・船形錠などは江戸時代に全国的に普及するほど安価に製造されるようになりました。